本記事は AI Maker Lab の個人ジャーナル(連載企画 #1) です。Vibe Coding ツールのレビューや比較ではなく、「実際に何が起きているか」 を月次で公開していきます。
この記事の30秒結論
- Claude Code を「個人開発の助っ人」ではなく、CEO・QA・事業開発・技術検証の4部門を持つ “AI会社” として1ヶ月運営してきた運用ログです
- 結果:個人開発の本数2本(P-015 Scout AI → P-019 AI Maker Lab → P-020 ジャーナル拡張)、AI Maker Lab だけで git コミット25本超、相談ログ27件、進行中PJ台帳46回更新、本サイト(AI Maker Lab)の本番公開、アフィリリンク5件Live化
- コスト:月 $0(Claude Code 通常運用枠、ChatGPT OAuth 経由の Codex SDK、Cloudflare Pages 無料枠、Astro 静的サイト)
- やってよかったこと:1日の意思決定数が増えた(テンポ向上)、台帳・相談ログ・メモリの3点運用でタスクの抜け漏れがほぼゼロに、運営知識が Markdown 資産として残り後から検索可能
- 失敗したこと:CEO代行作業を「オーナーが自分でやった」と誤帰属したこと、初期にブラウザ自動化を組み込んだのに使わなかったこと、など
詳細を以下に書きます。
目次
- なぜ「AI会社」という形にしたか
- 部門構成と役割定義
- 1日のオペレーション(相談処理フロー)
- 1ヶ月の実績数字
- 起きた失敗と学習
- 道具立て(コスト$0で動かす構成)
- 第一弾商品の予告
- FAQ
- 関連リソース
なぜ「AI会社」という形にしたか
最初は普通に Claude Code に「これやって」「あれやって」と話しかけていました。1人で個人開発をしていると、よくあるパターンです。
ただ、案件が増えてくると:
- 同じ判断を毎回しなければならない(「これは新規プロジェクトに採番すべき?」「これは品質チェックいる?」)
- 過去の決定が忘れられる(「先週これ決めたんだけど、なんでだっけ?」)
- 抜け漏れが発生する(QA をしないまま納品、競合調査をせずに着手)
そこで、Claude Code に 明示的に組織の役割を与える ことにしました。
| 役割 | 担当 | 設計の動機 |
|---|---|---|
| CEO | 全体の判断と部門間調整 | 1人の意思決定者を立てて、責任の所在を明確化 |
| QA部 | 成果物の批判的レビュー | 自分で書いたものを自分でレビューすると甘くなる |
| 事業開発部 | 市場・競合・収益モデル | 「作るか・作らないか」を判断する前に検証する |
| 技術検証部 | 技術的実現可能性の検証 | 推測ではなく実際に PoC を動かす |
これらをすべて 同じ Claude Code セッション内 で人格を分けて動かしています。部門ごとに別のサブエージェントを使う運用ではありません。役割定義書(マークダウン)を読み込み、その役割で動いてもらう方式です。
部門構成と役割定義
CEO(中央)
役割定義書は v2.7 まで改訂されました。中身は:
- 口調ルール(必ずデスマス調)
- 判断権限の境界(CEO判断可 / オーナー確認必須)
- 報告リズム(週次サマリー / 完了報告 / 随時エスカレーション)
- 壁打ちモード発動条件(指示に明確な悪手がある、前提誤りがある、より良い方法がある、情報不足、過去の方針と矛盾)
- プロダクト化機会の検出フロー
- 相談処理フロー(即答 / 壁打ち / タスク化 / プロダクト化候補 / 事業相談 の5分類)
ポイントは「判断権限の境界」を最初に明文化したことです。「これはCEOが勝手に決めて良い」「これはオーナーに必ず確認」を表にしておくと、毎回の判断で「これ確認すべきか?」を考え直す手数が省け、テンポが目に見えて上がります。
QA部
QA部の役割定義書には 「あなたの仕事は改善点を見つけること。良い点を褒める必要はない」 と明記しています。
評価チェックリストは:
- A. 基本品質(誤字・脱字、フォーマット)
- B. 内容の正確性(事実誤認、根拠、論理飛躍、情報の一次性)
- C. 実用性(読者にとっての分かりやすさ、アクション可能性)
- D. CEO指示書チェック(背景説明、完了基準の測定可能性)
判定は 承認 / 条件付き承認 / 差し戻し の3段階。差し戻しになったら CEO または該当部門が修正して再レビュー。
実際に運用してみると、QA部からの差し戻しは想像以上に頻発します。1ヶ月で確認できただけで、本サイトのコンテンツ品質保証だけで QA レビューサイクルを 3連続完走(記事#11+#4一括、記事#5、記事#6)しています。
事業開発部
事業開発部の特徴は 「仮説と事実を分離する」「主張には必ず根拠を付ける」 こと。すべての成果物に「情報の一次性」(一次情報に基づく/二次情報・一般論/混合)を明記する運用です。
技術検証部
技術検証部だけは少し特殊で、Codex SDK(OpenAI Codex CLI)を Claude Code から呼び出す構成にしています。理由:
- Codex は実機でコードを書いて動かせる
- Claude Code との比較・併用が可能
- 検証本体は Codex、レビュー・要約は Claude Code、という分業
これを codex-bridge(自作の薄いラッパー、npm link で導入)経由で呼んでいます。ChatGPT OAuth 認証で動かしているので、OpenAI API への追加課金は発生しません(ただし ChatGPT 側の利用枠を消費するため、多数案件を連続実行する場合は ChatGPT Plus 等への移行を検討する必要があります)。
1日のオペレーション(相談処理フロー)
オーナー(私)がメッセージを投げると、CEO が以下のフローで処理します:
1. 相談内容の本質把握
↓
2. 分類(即答 / 壁打ち / タスク化 / プロダクト化候補 / 事業相談)
↓
3. 分類に応じた対応
├ 即答 → その場で回答、必要なら追加調査タスク化
├ 壁打ち → 選択肢を構造化、メリット・デメリット提示、結論は押し付けない
├ タスク化 → 指示書作成、部門に振る
├ プロダクト化候補 → 候補メモに追記
└ 事業相談 → 事業開発部に振る
↓
4. 相談ログに必ず記録
↓
5. プロダクト化機会チェック(繰り返しパターンの検出)
このフロー、文字で見ると当たり前なのですが、「相談ログに必ず記録」と決めておくだけで、過去の決定の追跡可能性が劇的に上がります。1ヶ月で27件の相談が記録され、いつでも「以前こういう話がありましたね」と接続できる状態になりました。
1ヶ月の実績数字
| 指標 | 数 |
|---|---|
| 立ち上がった部門 | 4部門(CEO / QA / 事業開発 / 技術検証) |
| 起票したプロジェクト | 20本(P-001 〜 P-020) |
| 完了プロジェクト | 15本 |
| 進行中プロジェクト | 4本(P-019 運用中、P-020 Phase 0、T-001 / T-002) |
| 進行中PJ台帳更新回数 | 46回 |
| 相談ログエントリ | 27件 |
| QA部レビュー実施回数 | 6回以上 |
| 本番公開したプロダクト | 1本(AI Maker Lab) |
| 公開記事 | 10本超(最新は /posts 参照) |
| Liveアフィリリンク | 5件(onamae / mixhost / xserver / xserver-biz / conoha-ai-canvas) |
| git コミット(AI Maker Lab) | 25本超 |
特に 「進行中PJ台帳46回更新」 は、自分でやろうとしたら確実にサボっていた領域です。CEO に「実装した瞬間に台帳を更新」というルールを与えたら、本当にやってくれます。
起きた失敗と学習
正直なところを書きます。1ヶ月で 4つの「やらかし」 があり、そのつど運用ルールを足してきました。
失敗1:CEO代行作業を「オーナーが進めた」と誤帰属した
ある日、本番サイトの状態を CEO が報告してきた中で、実際は CEO 自身が実装したコミットを「オーナーが進めた」と書いていたことに気づきました。
人間(私)からの指摘で発覚。原因は「git log を確認せずに過去の自分の作業を忘れた」こと。
修正:メモリ(feedback_ceo_work_logging.md)に「CEO代行で実装・指示した作業は完了の都度、進行中PJ台帳・相談ログに反映」を追加。これで以降は実装直後に必ず台帳を更新する運用に。
失敗2:ブラウザ自動化を入れたのに使っていなかった
Playwright MCP を専用 Chrome プロファイルで導入し、✓ Connected まで確認したのに、その後の作業で CEO は curl と git だけで済ませてしまっていました。
オーナーが「ブラウザ操作でできうる限りのことはやった?」と聞いて発覚。実際にブラウザを使ったら、トップページに記事が表示されない致命バグ(pubDatetime が未来日付)と、Vercel pricing の表現ミスを1セッションで発見・修正できました。
修正:メモリ(feedback_browser_automation_realtime_reporting.md)に「ブラウザ自動化中の実況報告」と「作業終了時の browser_close」を追加。「ブラウザ権限がある以上、実機観測を積極的に投入する」を運用ルールに。
失敗3:両論併記のクセ
CEO が「(A) これがおすすめだけど、(B) こっちもアリです」と両論併記で終わるパターンが多発。オーナー側は判断疲れ。
修正:メモリ(feedback_ceo_self_consistency.md)に「CEOが明確な推奨を出して、オーナーが拒否する場合のみ別案」を追加。
失敗4:本記事を書くきっかけになった「思考漏れ」
オーナーから「Apple Storeで売れるアプリ作りたい、Gmail フォルダ分けとかも商品化できそう」と相談を受けた時、CEO は最初 P-019(既に稼働中の AI Maker Lab)との重なりを完全に見落としたまま、新規プロジェクト案を組み立てました。
オーナーが「Claude Code でやってること自体が宣伝になるんじゃない?」と発話して初めて気づき、戦略を「AI Maker Lab を3層拡張」に修正。
学習:新規アイデア相談時には「既存PJとの重複・統合可能性」を最初の検討項目にする。これは既存メモリ feedback_ceo_self_consistency.md の運用強化として記録。
道具立て(コスト$0で動かす構成)
「AI会社を運営する」と聞くと大層に聞こえますが、実態は マークダウンファイル群+Claude Code+無料インフラ で完結しています。
| レイヤー | 道具 | 月額 |
|---|---|---|
| 司令塔 | Claude Code(CLI) | 通常運用枠 |
| 役割定義・ナレッジ | マークダウンファイル群(/99_ナレッジ/) | $0 |
| 相談ログ・台帳 | マークダウンファイル群 | $0 |
| ブラウザ自動化 | Playwright MCP(npx) | $0 |
| 技術検証 | OpenAI Codex CLI + 自作 codex-bridge | $0(ChatGPT OAuth) |
| 本番サイト | Astro + Cloudflare Pages | $0 |
| ドメイン | お名前.com | 年 約2,000円 |
| 計測 | GA4 + Search Console + Bing WMT + IndexNow | $0 |
| 合計 | 約 ¥170 / 月相当(ドメイン代のみ) |
「個人開発で月10万を目指す」みたいな話をすると、サーバー代やツール代の心配をする人が多いのですが、Vibe Coding 時代の個人開発は実質ほぼタダで立ち上がります。詳細は「個人開発者のためのホスティング選び」に書きました。
第一弾商品の予告
ここまでの運営ノウハウを 「AI会社運営テンプレ+1ヶ月運営ログ」 として、来月(2026年6月)に Gumroad で公開する予定です。
中身(予定):
- CEO 役割定義書テンプレ(v2.7 を一般化)
- QA部運用ルール
- 事業開発部役割定義書
- 技術検証部運用ガイド(Codex SDK との接続を含む)
- 相談ログ運用テンプレ
- 進行中PJ台帳テンプレ
- 1ヶ月分の運営ログ(匿名化済):実際の判断の記録、失敗パターン、リカバリ手順
- 連続実行モード設計:オーナー作業負荷を最小化する仕組み
価格:$39(プロモ価格、リリース後30日間)→ $49(通常価格)。プロンプト集系($5-29)より高めですが、テンプレ単体ではなく 「1ヶ月の実運営ログ」とセットであることが差別化軸です。
2026-05-14 リリース済み:https://okamuse.gumroad.com/l/ai-company-ops-template
リリース後は 6ヶ月間、毎月の運営ログを既存購入者に無料で追加配信 します。本サイトのショップページからも購入できます。
「テンプレだけなら無料 OSS がいくらでもある」ことは承知しています。実際 Claude Code Templates の aitmpl.com には1000+ Agents が並んでいます。本商品の価値は 「実際に運営した時の判断・失敗・修正の記録」 であり、これは AI に書かせても出てこない部分です。
本サイト(AI Maker Lab) のフォロワーになっておくと、リリース時に通知が届くようにする予定です(X アカウント @aimakerlab 開設準備中)。
FAQ
Q1:これって Claude Code じゃないと動かないのですか?
いいえ、役割定義書はマークダウンなので、Cursor でも ChatGPT でも理屈上は動きます。ただし以下の理由で Claude Code がフィットします:
- 長い会話履歴の維持(コンテキスト管理が自動)
- メモリ機能(セッションをまたいでオーナーの好みを保持)
- MCP(Playwright、Codex SDK、自社MCPサーバーの追加が容易)
- Skill(再利用可能な手順をコマンド化)
Q2:1人でやるには大げさじゃないですか?
最初は私もそう思っていました。実際に運用してみると、「自分で全部決める」のと「役割を分けて判断させる」では、抜け漏れの量が桁違いでした。特に QA部(批判的レビュー)の価値が想像以上に大きいです。
Q3:複数エージェント・複数 LLM の協調運用ですか?
多くの場合は単一の Claude Code セッション内で人格を切り替える形です。サブエージェントを起動するのは、独立して並列化できる調査タスクなど限定的なケースのみ。Paperclip や AI Team OS のような「複数 LLM オーケストレーション」フレームワークとは設計思想が違います(あちらは大規模並列、こちらは小規模・コスト$0で完結が目標)。
Q4:本当に効果が出るまでどのくらいかかりますか?
1ヶ月運用してみた感覚値で:
- 3日目:役割定義書を読み込んでもらうフローに慣れる
- 1週間:相談ログが10件超、過去参照が利き始める
- 2週間:QA部の差し戻しが入って品質が変わる
- 1ヶ月:プロダクトが本番公開されて収益化軸が立つ
ただし、これは 私の個人開発ペース(毎日数時間〜数十時間 AI に向かう)での話です。ペースを抑えても、ルールを書く時間を取れば 2-3週間で立ち上がると思います。
Q5:失敗したらどうしますか?
本記事の「起きた失敗と学習」セクションが答えです。失敗が起きるたびにメモリに足していくことで、二度と同じ失敗をしない仕組みにしています。これは AI 会社運営の最大の利点だと思っています。
情報の一次性について
本記事は AI Maker Lab の運営者(私)が、自分で実際に 2026-04 中旬 〜 2026-05-14 の約1ヶ月間運営した記録 に基づいています。
- 一次情報:相談ログ27件、進行中PJ台帳46回更新、git コミットログ、本番公開した AI Maker Lab、Gumroad 競合調査ログ
- 二次情報:aitmpl.com の Templates 数、Gumroad の Claude Code 系商品リスト、Paperclip の設計思想
- 想定・推測の範囲:「個人開発ペースを抑えても 2-3週間で立ち上がる」は私個人の見立て、第一弾商品の価格帯 $39-49 は競合観察から逆算した想定値
本連載は 連続発信予定です。来月(2026-06)の運営ログも公開します。
まとめと関連リソース
この記事の要点:
- Claude Code を CEO・QA・事業開発・技術検証の4部門を持つ「AI会社」 として1ヶ月運営した
- 役割定義書(マークダウン)と相談処理フローを明文化することで、判断スピードと品質が両立
- 失敗が起きるたびに メモリに記録 → 運用ルール化 することで、二度と同じ失敗をしない
- コストは月 ¥170 相当(ドメイン代のみ)。Claude Code 通常運用枠+無料インフラで完結
- 1ヶ月で 本番公開1本・公開記事10本超・アフィリLive5件・PJ台帳46回更新(最新の記事数は /posts 参照)
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この連載のフォロー方法:
- 本サイト(AI Maker Lab)の RSS:
https://aimaker-lab.com/rss.xml - X:@aimakerlab(2026年5月〜6月開設予定)
- 第一弾商品(AI会社運営テンプレ+1ヶ月運営ログ):2026年6月 Gumroad リリース予定
来月の運営ログ(連載 #2)でまた会いましょう。
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